“若い世代ほど、投資リスクを取れる”のは、どうして?
現在25歳の会社員Aさんは入社3年目。収入は少ないですが、なんとかやり繰りをして毎月2万円を貯蓄に回しています。そんなAさんの貯蓄の方法は?
(A) まだ若くてお金が貯まっていないので、安全確実な預貯金で貯蓄する。
(B) まだ若くてリスクが取れるので、株式あるいは株式に投資する投資信託などを活用して投資する。
あなたがAさんだとしたら、どちらが感覚として近いですか?考え方のヒントは下の図です。
この図は、若い世代の人的資本と投資リスクの関係をイメージしたものです。
前回「人的資本は金融資本の源」でご紹介したように、働ける期間が長い若い世代が保有する人的資本(=退職までに稼ぐお金)は、60歳前後の世代と比較すると豊富です。つまり、金融資本で投資リスクを取っても、全体への影響が小さいといえます。
25歳と65歳の損失は重さがまったく異なる
統計をもとに現在25歳のAさんと現在60歳のBさんを例に投資リスクをイメージしてみましょう。
Aさんが今後40年くらいにわたって得られる収入(=人的資本)は、約2億7000万円*であり、今後の収入から生じる将来貯蓄の余力がAさんには豊富にあるといえます。そして毎月コツコツと貯蓄をしているAさんは金融資本を約150万円**保有しています。この金融資本で投資リスクを取った結果、50%の損失となった場合、Aさんが持つ金融資本は75万円に減少します。たしかに75万円の損失は大変辛いですが、豊富な人的資本を持つAさんにとって、この損失を挽回することは、おそらく可能でしょう。
一方、60歳のBさんが65歳の退職時までに得られる収入は約3400万円*で、生活費等を差し引いた将来貯蓄の余力がBさんは相対的に大きくないといえます。Bさんが保有している約1600万円**の金融資本で投資リスクを取った結果、50%の損失となった場合、Bさんの金融資本は約800万円に大きく減少します。金融資本の源になる人的資本が少ないため、Bさんがこの損失を挽回することは容易でなく、Aさんのような若い世代と比較して投資リスクを取りにくいといえます。
これから「自分年金」作りのために資産運用を始める方や、すでに始めている方も、このような人的資本と投資リスクの関係をあらためて認識することで、金融商品を選ぶ視点が変わるかもしれないですね。
*厚生労働省「平成24年賃金構造基本統計調査」(民営事業所に勤める正社員・正職員で大学・大学院卒。企業規模10人以上の産業計)。ただし退職金を除く。
**金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(二人以上世帯調査、2011年)による、一世帯当たりの金融資産保有額の平均値。
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